
弊社は、1964年の高エネルギー物理学研究所(現高エネルギー加速器研究機構。KEK)開設以来、陽子リニアックを初めとして“トリスタン”MRの電子・陽電子衝突型加速器、その後の“Bファクトリー”の加速器などKEKの主要な加速器建設計画に携わってきました。中でも先のトリスタン計画は、世界初のニオブ製超伝導加速空洞の大規模長期運転を成功させ、その後の世界の超伝導加速器建設計画の突破口となりました。
弊社は、“トリスタン”のニオブ超伝導加速空洞の性能を大きく左右する表面処理に携わりました。当時は表面処理技術の揺籃期でもあり、一体構造となった空洞内面を効果的に機械研磨する手段は開発されておらず、やむなくパーツ毎のバフ研磨を採用し、その後電子ビーム溶接で一体化する手法を採用しました。そして、この一体複雑形状の空洞内面を鏡面仕上げする表面処理法として、KEKと横型連続電解研磨法を共同開発し、トリスタン超伝導空洞の高性能化に大きく貢献しました。
しかし、電解研磨工程ではニオブが水素を吸蔵し、その弊害が発生します。それを除くためにやむなく電解研磨後高温真空焼鈍工程を採用しました。その結果, 超伝導加速空洞の製作に余分な工程が必要となり、高コストになりました。また高圧ガス容器則の適用のため、高温真空焼鈍工程で超伝導加速空洞の機械強度を低下させない工夫が必須でした。弊社は、“トリスタン”以後も研究員を常時KEKに派遣し、超伝導リニア−コライダ−(TESLA)等、将来の大規模応用に備えニオブ製超伝導加速空洞の高加速性能と低コストを両立させる技術開発を推進してきました。
その研究開発成果として今般、
の2点の発明を行いました。これらの発明により研磨加工工数の大幅な低減と脱水素目的の高温真空焼鈍工程の削除が可能となり、高加速性能の超伝導加速空洞を経済的に製作し得る見通しを得ました。なお水素フリー機械研磨法の技術は、ニオブ製超伝導加速空洞のみならず真空部材に対しても有効な新技術です。
また、上述した画期的なニオブ製超伝導加速空洞の表面処理法は、去る2003年9月10日、ドイツで開催された「第11回 超伝導高周波応用国際会議(the 11th Workshop on RF Superconductivity, SRF2003)」に於いて、弊社開発担当者が「水素フリー電解研磨の開発と水素吸蔵現象(Development of Hydrogen-free EP and Hydrogen Absorption Phenomena)」と題して発表し、研究のオリジナリティーと超伝導加速空洞分野への多大な貢献が評価され、当会議で新設された若手研究者に授与する第1回の最優秀賞を獲得しました。弊社とKEKで共同開発した電解研磨法は、DESY(独)、JLAB(米)などでも採用され、今や高電界超伝導空洞表面処理技術のグローバルスタンダードと成りました。今回の発明はそれと合わせ、世界的に注目される技術です。